ばらかもん完結記念 小野大輔(半田清舟)×原涼子(琴石なる)×ヨシノサツキ スペシャル鼎談

ばらかもん完結記念 小野大輔(半田清舟)×原涼子(琴石なる)×ヨシノサツキ スペシャル鼎談 お二人が読まれたのは「ばらかもん18巻」134話と、「ばらかもん18+1」138話。

「ばらかもん」の最終回を1か月後に控えた2018年11月某日、この企画のために半年ぶりに集まったTVアニメ「ばらかもん」半田清舟役・小野大輔さんと琴石なる役・原涼子ちゃん、そしてヨシノサツキ先生。インタビューの前に、誰よりも早く「ばらかもん」の最終話を読んだ涼子ちゃんは涙でいっぱいに。それを見てもらい泣きしてしまうヨシノ先生。そして二人を優しく見守る小野さん――そんな優しい雰囲気の中、インタビューは進むのでした。

アニメとの出会いがばらかもんを変えた…?
――小野さん、涼子ちゃんに伺います。 先ほど「ばらかもん」最終話、そして「18+1」の最終話をお読みになられましたが、作品の最後を見届けた今の率直なお気持ちは?
小野:本当にばらかもんらしい、これがばらかもんだっていうラストだったなと思いました。もちろん終わってほしくはないけれど、みんなが待ち望んだ、みんなが幸せな気分になれる最終回だなと思いました。
――18巻と18+1、両方の最終回をお読みになられましたが、どちらでしょう?
小野:どっちもですね。18巻の最後を日常の続きというか、終わりが始まりになるというというところで終わっているのも見事ですし、その繰り返しがたどり着く先っていうのが18+1には描かれていて、それもまた終わりの始まりになってるっていうのが本当に素晴らしいなって。
ヨシノ:ありがとうございます。初めて最終回を編集部以外の人に読んでもらったので…ずっとドキドキしてたのですが、よかったです。
小野:こんなこと言うの失礼かもしれないけど、本当に上手に終わらせてるし始まらせてるし、ヨシノ先生天才だなって改めて思いました。
――涼子ちゃんはどうでしたか?
涼子:最初はいつもどおり面白いなぁって読んでいて…でも最後の最後で1話と同じような光景になって。だけど1話とはちょっと違う二人で。終わりだけど、またここから始まるんだろうな、これがずっと続いていくんだろうな…って感じで。悲しいけどすごく悲しいわけじゃなくて、すごく好きな終わり方だなと思いました。
ヨシノ:そう思ってもらえてよかったです。いろんな終わらせ方があったと思うのですが、アニメを経験してから、最終回に向けての方向性が変わったような気がしてるんですよね。当初は、半田にすごい賞をとらせて東京に行かせて、それをみんなが島でテレビか何かで見てて「おめでとう!」っていうようなエンディングを考えていたのですが、アニメが終わってからそうじゃないんじゃないか、と思うようになって。もっとこう、寄り添っていけるような終わり方があるんじゃないかと思うようになったんです。上を目指すんじゃなくて。
――たしかに半田先生が書道教室を開く、という展開は急に決まったものだったとファンブックの中でおっしゃってましたね。
100話を記念して刊行された「ばらかもん公式ファンブック」には、ヨシノ先生のデビュー前から、半田が書道家をやめると宣言する単行本13巻(第100話)までのロングインタビューが掲載されている。
ヨシノ:なるのお父さんとかも最初はまったく出す気はありませんでした。だけど、「頼れるのは遠くの身内より近くの他人」ということを描きたくなって。なるのお父さんも安心してなるを任せられる大人をなるのそばにおいてあげたくなったというか。
――それが半田だった、ということですね。
ヨシノ:はい。なるはずっと村の中に居場所がなかったと思うんですよね。誰とでも仲良くできるけど、強く頼れる人がいないというか。その中でポンと現れたのが半田だった。だけど最初はその半田もいなくなる設定で、半田がいなくなることによってなるがひとつ大人になる、というようなラストを考えていました。でもそういう大人にならせ方ではないのかな…って。
――人に頼るようになる、という成長をさせたくなった…?
ヨシノ:そうですね。私はずっと一人で島で漫画を描いてたんですけど、アニメのスタッフさんたちとかかわることによって、一人で描いてちゃだめだなと考えるようになったんですよね。「人とのつながりは大事、田舎にはそういうのがあるよ」っていうものを描いていたつもりでしたが、多くの人とかかわるようになって初めて、人とかかわってなかったことに気づいたというか。よく田舎の人はいい人だ、みたいに言われますが、田舎にいい人がいるんじゃなくて、いい人ってどこにでもいるんだと思うんです。そういう出会いをしていく中で、ばらかもんは、賞がどうとか、字が上手とか、そういうことじゃないんじゃないかと思い始めたんです。
小野:そうなんですね…。先生、でも石垣描いてたじゃないですか。
ヨシノ:そうですね(笑)。今考えれば、まわりが思う田舎のあたたかさをただ描いてただけな感じがしますね。人とかかわらず、一人ぼっちでもくもくと(笑)。
小野:まぁそもそも一人で描いてるってことがすごいんですけどね(笑)。
小野さんにとっての涼子ちゃんはライバル、涼子ちゃんにとっての小野さんはサンタクロース!?
――小野さんと涼子ちゃんにお聞きします。お二人が初めてお会いしたのは2014年の冬頃、5年ほど前になるのですが、初対面の時のことは覚えてますか?
小野:初めて会ったのは、アフレコの前に顔合わせをさせてほしい、という提案がありまして。僕はすごく緊張してましたね。子供と大人のアフレコって別々に録ることがほとんどなんですよ。だからまず、子供と一緒に録るというのが初めての経験でした。そういう意味では半田先生と同じ感覚だったかもしれないですね。ある程度仕事ができるようになってきたかな、って思ってる時期でもあったし、だけどまだ自分が経験してないことがいっぱいあって…。子供たちにどう接すればいいんだろう、座長としてどう振舞えばいいんだろう…って会う前からいろいろ思いめぐらせて勝手にプレッシャーを感じていました。
――涼子ちゃんはどうでした?
涼子:すごい声優さんだよ、っていうことを聞いてたから会う前からすっごい緊張してました。
小野:誰が言ったんだよ(笑)
涼子:お母さんが「この声優さんすごい人なんだよ」って…。
小野:お母さんか(笑)
涼子:初めて会ったときは小学校2年生だったんですけど、一緒にお仕事するのがすごい声優さんだから、プロとしてしっかりお仕事をしなきゃいけないって緊張していて。でも実際会ってみたらすっごい優しくて。紙がカサカサなっちゃいけないよ、とか、こうやってめくったら音が出ないよとかいろいろ教えてくれて、さすがだなぁ~かっこいいなぁ~とずっと思ってました。
――その時から5年、変わったなと感じることはありますか?
「5年前と変わったことはない」という涼子ちゃんですが…身長はもうこんなに大きく…!
小野:なるは…おっきくなりましたよね(笑)。そして僕は老けました(笑)。
涼子:変わったことはないような気がして…変わってるのかもしれないけど、全然気づかないかも。
――ヨシノ先生はどうですか?
ヨシノ:私は…ちょっとだけアクティブになった気がしますね。引きこもりで怖くて島から出られなかったのですが、小野さんも涼子ちゃんも来てくれましたが、アニメ関係者の皆さんが島にホイホイやってくるんですよ(笑)。そのフットワークの軽さに憧れて島の外に出る機会が増えたように思います。
小野:みんな理由付けては五島行きたいんですよ(笑)。絵柄の変化とかもそういう影響とかがあったりするんですか?
ヨシノ:あ―――…(笑)。絵柄は割といろんなものに影響を受けがちなのですが、たしかに9巻10巻のあたりの作画がすごくしっかりしてるのは、アニメへのいい意味でのライバル意識があったからだと思いますね。できるだけ誰も同じフィールドにあがらないように自分が生まれ育った島を題材にばらかもんを描き始めたわけなんですけど、ライバルって大事なんだなって思います(笑)。
小野:僕もすごく言われてましたよ。若林音響監督に「お前子役に負けてるぞ」って(笑)。若林さんってもともと半田父のように厳しい方なんですけど、がっつり組んだのって「ばらかもん」が初めてだったんですよね。それこそ顔合わせのころから「お前頼むぞ」って感じで言われて、アフレコの時も「負けんな」って…。ちょっと子供たちをライバル視してましたね。アドリブセンスとか…すごいんですよ(笑)。1話でなるがころころ転がるシーンがあるのですが、「なる、適当にアドリブ入れてみて」って言われてなるはそのまま「コロコロコロコロ…」って言ったんですよね。
初対面の半田に何度も家から追い出されたなるが“追い出され慣れる”このシーン。当時小学3年生だった涼子ちゃん渾身のアドリブは是非アニメDVDでチェックを。
涼子:なんて言っていいかわかんなくて…(笑)。そのまま読んじゃった。
小野:その瞬間に現場がわっと盛り上がって…。もっとみんなを笑わせようとか、盛り上げようってみんなが思った瞬間だったのかなと思いますね。なるがそのままなるだった、っていうのがやっぱりこの現場においては大きな要素だったと思いますね。おかげでみんながこの現場にいろいろなものを注ぎ込めたのかなと思います。
――涼子ちゃんはライバル意識とかありましたか?
涼子:ライバル意識とかはなかったかな…。顔合わせの時から「小野さんが半田先生」って感じがずっとあって、アフレコしてるところを見るのがすごく楽しくて。いつもおお!かっこいいな、って思ってました。
――どのシーンが一番かっこよかったですか?
いつも穏やかで優しい”小野先生”の見事なギャップ演技に幼い涼子ちゃんはただただ圧倒されたとのこと。
涼子:はじめに館長をぶん殴るシーンとか、書展で1位取れなくて「2位じゃだめだ」って美和ねぇにキレてるところとか、本当に怒ってるみたいだから、演技だけどほんとみたい…ってすごい鳥肌が立って…。半田先生が書道に本気、とかじゃなくて小野さんが書道に本気、っていう感じがしてたというか…。
――涼子ちゃんは当時8歳だったし、サンタさんが本当にいる、みたいに、小野さんが半田先生だと思ってた、みたいな感じに近い?
涼子:そうですそうです! 会う前から声を想像しながら原作の漫画を読んだりしてたんですけど、初めて会って声を聴いたら思った通りの半田先生だったから、やっぱりこの人が半田先生だったんだ!って。
小野:ああそっかぁ…。それが聞けて本当に嬉しいです。というのも、僕は最初は無理をして、虚勢を張って、半田になろうとしていた部分があったから。最初のころは若林さんに「それはお前がやりたい半田だ」って言われてて。僕は声が少しタフなんですよね。だからかっこよくなりすぎたりとか、芯がありすぎたりとか、弱くなかったりとか…。だけど半田って、23歳で、へたれじゃないですか。そこに寄り添うためには、僕のまんまだとそうならないから、けっこう作りこんで寄せていった部分があるんですよね。もっともっと情けなく、もっともっとナイーブに…って。でも周りのキャストが役柄以上に役柄でいてくれるから「座長なのに自分が一番かけ離れていてはまずい」という意地みたいなのがありました。だからそうとうプレッシャーがあったのですが、今なるが言ってくれたように最初の顔合わせの時から半田先生になれていたのだとしたら本当によかったと思います。
小野さんお気に入りの1枚。「なるはいつもアフレコにこの髪型で来ていて。単行本の6巻で半田が字を書けなくなってなるの真似をするシ―ンがあるのですが、そのシーンを再現しようってなったんですよね。(小野)」
10年間の感謝、10年後のばらかもん。
――TVアニメ、ドラマCDと幅広いエピソードを演じていただいたわけですが、お二人はやってみたかったエピソードはありますか?
小野:うーん…いろいろあるけど…やっぱり最終回は自分たちの声でやりたかったかなぁ。さっきなると一緒に最終回を読みましたけど、一緒に声をあてながら読んじゃったし、やりたいなと思いましたね。18+1の何年後かの最終回とともに。
涼子:さっき18+1のほうの最終回を見て、ちょっと大人になったなるが素手でタコ捕ってて…ああ変わらないんだなぁって思いました。
――今お話しに出ている、18+1の最終話では、だいたい10年後のばらかもんが描かれているのですが、なるの顔は出ていませんね。これはどうしてでしょう。
何かあったときはいつも駆けつけてくれるなる・ひな・ケン太の3人。アニメばらかもんのイベント、ヨシノ先生の誕生日、そして最近はばらかもんカフェにも遊びに来てくれました。
ヨシノ:なるの漂わせる切なさみたいなものを表現したかったのかなぁ(笑)。なるって一見明るく見えるけど、暗く見ようと思ったら少しかわいそうな子じゃないですか。小さいころから親がいなくて。大変な子だと思うんですけど、かわいそうなだけじゃない逞しさみたいなものを背中で語らせたかったというか。
小野:なる(涼子ちゃん)が大人になったとき、といってももうだいぶ大人なんですけど、例えば二十歳ぐらいになったときに、この18+1の最終回を演じられたらいいですね。僕がずっと大事にしている“約束”があって。なる・ひな・ケン太の3人と収録の後にご飯を食べに行ったんですよ。そこで僕がお酒を飲んでたらケン太が「みんなが二十歳になったとき、ここのお店でみんなでお酒を飲みたい」って言ってくれて。18+1を大人になったみんなでアフレコして、その後にお酒が飲めたら、本当に最高ですね。
――7年後ですね。意外とすぐかもしれません…!
涼子:今日ヨシノ先生に「何年かあとのばらかもんが読んでみたい」って言おうと思ってたんだけど、18+1ですでに描かれてたんですよね(笑)。ヒロシが料理人になったのとかも見たいし、美和ねぇとタマの就職とかも気になります。タマは漫画家になったのかな…とか。あと半田先生の恋愛問題も見てみたい。
涼子ちゃんは「はんだくん」が大好きで、ヨシノ先生に会うたびに好きなシーンを語ってくれるそう。「イレイサーの弟子になって半田を守ってあげたい(涼子)」とのこと(笑)。
小野:先生はその辺は朴念仁だからなぁ…。
涼子:「はんだくん」の中で半田くんが占いされたとき「結婚してないのに子だくさん!?」って言われてたから、結婚しないのかな?ってすごく気になってます(笑)。
――「はんだくん」といえば、18+1の最終話では途中「はんだくん」というか、高校生の頃の自分を半田が語っていますね。どうしてこのような形になったのでしょう?
「ばらかもん18+1」の最終話では、半田が自分の半生を振り返るところから始まる。
ヨシノ:「はんだくん」はギャグマンガとして思い切って描いちゃったので、完全に「ばらかもん」の過去だととらえられてしまうと、矛盾やほころびが出てしまうんですよ。だから「はんだくん」は半田の誇張した昔語りだった、というようなイメージにしたくて18+1の最終話はああいう形にしてみました。あとは「はんだくん」の最終回のあとにこれを見ても「はんだくん」の最終回になるし…という感じで「ばらかもん」「はんだくん」通しての全体の最終話という風に読んでもらえればなぁと思っています。
――最後に。これまで「ばらかもん」を応援してくださったファンの方々にメッセージをお願いできますでしょうか。
涼子:とにかく「ありがとう」という感謝の気持ちがいっぱい、いっぱいです。ヨシノ先生が島に生まれてなかったらばらかもんも生まれてないし、ばらかもんが生まれてなかったら半田先生やなるも生まれてないし、私もファンのお友達と出会うこともなかったし…ばらかもんが存在したことで貴重な経験をたくさんさせてもらえました。アフレコが始まった時、私は「なるはなるになる」ということを目標にしていましたが、アニメが終わったあともファンの皆さんが「なるちゃんだ!」って言ってくれたりするのが本当にうれしくて…ファンの皆さんから私の方がずっと元気をもらっていました。これから先、どんなに大きくなってもばらかもんを忘れないし、息詰まったり嫌なことがあったりしても、ばらかもんがずっと心の支えになるんだと思います。だから、ばらかもんフォーエバー!って気持ちをファンの皆さんと一緒に持ち続けていきたいなと思います。本当にありがとうございました…!
小野:本当に今なるが言ってくれたことがすべてだと思いますね。思い出だからどんどん古くなっていくものではなくて、なるだったらなるの、彼女の人生の中にずっと残っていて宝物になってくれているのが本当に嬉しいし、僕もそうです。アフレコの期間でいうと3か月ちょっと。生きてきた中で本当に本当に短い3か月の中にいろんな出会いと、いろんな成長と、青春のような熱い思いや情熱、いろんなものすべてがあの3か月に込められているような気がしていて。僕はこの作品に座長として何ができるのか、何が残せるのかと思っていましたが、終わってみて振り返ってみると、一人だったらできなかったな、みんなで作り上げたんだなと思います。僕は石垣のエピソードが本当に好きで。この人たちがばらかもんを作ってくれたんだ、というのを絶対に忘れないですし、僕にとっても一生の宝物をいただいたという思いでいっぱいです。本当にありがとうございました。なるにもありがとう。ヨシノ先生にもありがとう。みなさん本当にありがとうございました。
ヨシノ:読んでくれる人、聞いてくれる人、観てくれる人が考え方や感じ方が近くなければ伝わらなかったんじゃないかと思うんですよね。18巻の作者コメントに「受け取ってくれてありがとう」って書いたのですが、原作を読んでくださっている方々、アニメを見てくださった方々の受け取ろうとする心が本当に優しかったんだなと思っています。あらを探せばいくらでもあると思うのですが、ばらかもんに共感して同じ気持ちで読んでくれて、見てくれてありがとう、と伝えたいです。10年間本当にありがとうございました。
――またいつか皆さんがお仕事でご一緒できることをお祈りしつつ…本日は心温まるお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました…!
2015年アニメばらかもんのイベントにて。お忙しい中、小野さんが自ら書き上げた「石垣」。小野さんの「ばらか愛」がこもった、すべてのスタッフの名前が刻まれた大きな大きな1枚。

こちらのスペシャル鼎談は、1月12日発売の月刊少年ガンガン2月号にも掲載されます!

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